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3.ISAPとサンルイオビスポアートセンター

いよいよ5月5日(土)の夕方、ISAP展のオープニングのときがやってきた。
前日のArt After DARKの折にも一旦立ち寄ってみたところ、すぐにアートセンターのキュレーターAmyとエグゼクティブディレクターのKarenの歓待を受けた。わざわざ日本から来てくれて・・と歓迎されて嬉しいひとときであった。そういえば、どこを見ても日本人が居ない。ひとことも日本語を話す環境がないというのは、いつも行くNYとちょっと違う点だろう。どちらかというと白人が多い土地柄のようだ。

80点近いISAP展作品が美しく配置され、私の送った「楽園シリーズ」もしっかりと掛けられていた。ダウンタウンの中心、mission de tolosa教会の前の公園が目の前に広がるこのSan Luis Obispo Art Centerは、ギャラリー街の核となる場所である。スキップフロアの画廊内はかなり広く、2階にはサブギャラリーがあり、メインギャラリーの隣はワークショップができるようなオルタナティブスペースになっている。
キュレーターのAmyは、長年ニューヨークの美術館に勤務しモダンアートを扱っていたが、より身近な現代の作家と仕事をしたいと、このアートセンターへの勤務を決め、サンルイオビスポに引っ越してきたという。誰に対してもpoliteで、本当に生き生きと仕事をこなしていた。Karenも親切なディレクターで、ダウンタウンでぜひ行くべきアートスポットをあちこち教えてくれた。その中に、60年代ヒッピー文化を継承するカフェがあった。経営者本人が往年のヒッピーで、連綿とアート活動を続けているのだそう。残念ながらたどり着けなかったが、このように一度決めた主義を貫き通す人たちがいるというのは、実にあっぱれなことだと思う。そういえば町の店のなかには、絞り染めのTシャツやビーズを売っている店があったっけ。Karenはまた、オルタナティブスペースのアクリル画スタジオをわざわざ開けて案内してくれた。米国でポピュラーな画材やスタジオの建具、効果的なアトリエの使い方などを細かく見ることができてとても参考になった。

オープニングパーティーはアーティストとお客が入り混じって賑わい、例によって地元のワインがふんだんに振舞われた。全米から作家が集まり、ISAPの会長Robert Burridgeによるスピーチがあった。Mr.Burridgeは25年間工業デザイナーとしてキャリアを積んだのちにフルタイムのアーティストに転向した画家で、作品は映画やTV番組にも登場し、サンフランシスコやハワイ、オーストラリアをはじめ世界中の画廊で扱われている。
私の作品やキャリアに感嘆してくれて、ISAP展への入選を喜んで下さった。
今回意義深く感じたのは、出品作家のほとんどがフルタイムのプロフェッショナルアーティストで、同じアクリルという素材を使うため、かなり細かい情報交換ができたということだろう。メディウムのことから作業環境、そして販売に関することまで。
皆、キャリアとしても中堅というところで、それぞれの拠点で実績ある落ち着いた活動をしている。帰国したあと、数名のアーティストとメールのやりとりをしているところだ。今後もISAPを通して良い交流ができそうで楽しみである。

   

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