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7.「子連れNY」がもたらすもの

長男、次男ときて今回最後の末娘を連れてのNY。初めての子連れNYは6年も前のこと。ミレニアムからこちら世界の情勢はめまぐるしく変わり、個々人をとりまく環境も変化してきている。おまけに年齢も重ねるわけだから毎年条件は違ってくるけれど、果たして私のこのプロジェクトは子供達に、そして私に何をもたらしてきただろう?

親として、子供の全幅の信頼のもと外国を連れ歩くのが有意義なことであるのは間違いない。それぞれの思春期真っ最中に濃密な時間を一緒に過ごし、親の仕事の一端を垣間見てもらうことができた。
遠い学生時代に一人米国に渡り1〜2年冒険修行をした経験のある夫は若者が外国に出て受ける刺激の大きさを良く知っているので、子連れNYプロジェクトをずっと応援してくれている。私にとって、おそらく一生忘れられない子供との思い出を作ることができ、夫にも周りにも感謝している。

子供にとってはどうだろうか。
現在社会人として札幌で料理人として働く長男は、今もNY旅行をよく話題にする。ことにチャイナタウンのレストランで遭遇した、働く青少年達の仕事ぶりが刺激になったといい、彼自身の進路にも少なからず通じるものがあったようだ。人まみれで体を動かし働くのが何より好きな長男は、創意と工夫のチャレンジに溢れた料理の世界で上司や同僚、友人に恵まれ、水を得た魚のように元気よく人生を歩んでいる。高校を転校してまで沖縄を飛び出し北の大地に渡った子である。機会があれば、料理の道で外国にも飛び出したいと本人は言う。

次男は現在高校3年生で大学受験勉強の真っ最中だ。彼もまた、NYで見聞きしたものを決して忘れない。全く興味のなかった英語がジワジワと好きになり、今や得意科目となっている。メディチ家じゃあるまいが豊富な語彙で私に時々英会話を挑んでくる。将来司法の仕事を目指すのも、より高く厳しい目標を自身に課して人生をスタートさせたいということのようだ。一生懸命学問に打ち込むのは素晴らしいことであり、そんなゆるぎのない勉強熱心な大学生が世界中から集まるという点もまた彼の見たNYの一面だった。

末娘の“NY症状”は行ってきたばかりなのでまだ分からないけれど、ひとこまひとこまが強烈な体験としてはっきりと脳裏に焼きつき、何か刺激になったことは確かなようである。

いずれの子供も、世界一の大都会を見れたことを親にまず感謝している点からも、ひとまずプロジェクト成功と言って良いだろう。
彼らがこれから自分の生きる道を行く上で折々小さなヒントになったり、思い出す事柄のひとつとしてこの旅がいつまでも風化しないようであれば、親としてこれ以上望むことはない。

さて、以上のように3人とも旅は無事終了したので今後はもっとアーティでコアな旅にしたいもの。ビジネスにしても向こうの友人知人との関係にしても、もう少し長期滞在してじっくり時間をかけてつくっていきたいといつも願っている。

子供がスムーズに巣立てば(つまり上手くいけば)、時間はたっぷりあるので(これまた上手くいけば)色々楽しみである。
若い頃さんざん乗ったせいか知らないけれど大の飛行機嫌いの夫をあちこち連れ出したいと画策しているが、子連れNYよりも困難な挑戦であることは間違いなさそうだ。

沖縄とNYでこれまで出会ったすべての人に、心からありがとうを言いたい。来年もまた、NYの地を踏むことができるのを楽しみにしつつ。
 (おわり)

                    

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